ただ証明したい、俺たちが一番面白い。
「ただ証明したい、俺たちが一番面白い。」とは、M-1グランプリのオープニング(VTR)のラストで流されるナレーションのことです。
このナレーションに合わせて大会参加コンビの芸人が映し出され、特に「面白い」の部分で映し出される芸人がその大会の本命とされる傾向にあります。
2007年:笑い飯(西田)
初めての“俺たちが一番面白い”枠。
この時点で笑い飯は2002年から6年連続決勝進出の大快挙、最終決戦には3度進出しており準優勝は2回と実績は十分。
ラストイヤーのトータルテンボスや6年ぶりの返り咲きとなったキングコングを抑え、初の“面白い”枠に選ばれたのでした。
ちなみにこの年の笑い飯はトップバッターで“積み上げ型”のロボットネタを披露し、5位という結果でした。
敗退コメント(名言(?))でもある「一歩も動かんどー!」が飛び出したのもこの年です。
2008年:スピードワゴン(井戸田)
この年は準決勝で敗退し敗者復活戦に回ったスピードワゴンの井戸田さんが選ばれることになりました。
ストレートの決勝進出組以外から“面白い”枠が選ばれるのは異例中の異例、
…というよりもまだこの時代は“面白い”枠に大本命のコンビを選ぼう、という運営側の意識が大きくなかったのかもしれません。
この年は決勝初進出が8組中5組を占めるなどフレッシュな面々が揃ったこともあり、
準決勝敗退組の中から過去二度の決勝進出経験があり、ラストイヤーであり、さらに敗者復活が叶えば知名度的にも本命になり得る、スピードワゴンが選ばれたのかもしれません。
前年度3位でこの年決勝進出を果たしているキングコングが本命候補として選ばれてもおかしくはありませんでしたが、
“あの有名なスピードワゴンもこの大会に参加してるんだよ”という視聴者へのアピールの目的もあったのかもしれません。
同じく有名なキングコングに関しては、アピールをしなくても決勝でお茶の間の目に触れることは確定しているので。
ちなみにこの年の敗者復活枠はオードリーで、勢いそのままに準優勝という結果でした。
2009年:無し
“俺たちが一番面白い”枠はこの年は不在。
というよりも、厳密には“一番面白い”の時に映し出されたのは歴代王者8組でした。
「俺たちが一番面白い」による優勝候補演出を毎年固定化させよう、という風潮は、そもそもこの頃はまだ無かったのかもしれません。
この年は連続出場組・返り咲き組が決勝進出組の大半を占めており、仮に“俺たちが一番面白い”枠を予想しろ、と言われてもかなり困難を極めたと思います。
・連続出場組:笑い飯(8年連続8回目)、モンスターエンジン(2年連続2回目)、ナイツ(2年連続2回目)
・返り咲き組:東京ダイナマイト(5年ぶり2回目)、ハリセンボン(2年ぶり2回目)、南海キャンディーズ(4年ぶり3回目)
ナイツ塙さん、モンスターエンジン西森さん、東京ダイナマイトハチミツ二郎さん、ハリセンボン春菜さん、南海キャンディーズ山里さんに笑い飯の両名を加えた中からの選択ということになるとは思いますが、
多くの組が出場2回目という中で、唯一3回目の出場でありバラエティでの活躍も目覚ましい南海キャンディーズの山里さん、
または
一部でラストイヤーとして報道されていたM-1の顔である笑い飯のお二人(結果的に翌年度にも出場できましたが)、
この3人の中の誰かである可能性は濃厚だったかもしれません。
2010年:笑い飯(西田)
M-1グランプリ最後の大会ということもあり、9年連続9回目の出場でありラストイヤーでもある笑い飯の西田さんがこの枠に選ばれました。
普段であれば3年連続出場のナイツや2年連続出場のハライチなども対抗馬になったのでしょうが、
M-1のラストイヤー&笑い飯のラストイヤーということもあり、流石にこの年は笑い飯が大本命となったのでしょう。
この年の笑い飯は、2009年で爆発した鳥人のフォーマット(Wボケ×ファンタジー)を基にした漫才を2本揃え、
ダークホースのスラムクラブと前年度チャンピオンのパンクブーブーに競り勝ち、見事優勝を果たしたのでした。
2015年:ジャルジャル(後藤)
M-1、復活。
5年ぶりに復活したM-1、この辺りから“俺たちが一番面白い”枠が注目を集め始めるようになります。
この年の“一番面白い”枠はジャルジャルの後藤さん。
ジャルジャルは2010年度からの2大会連続出場、
三大会連続出場のハライチや、二大会連続出場の銀シャリ、10年ぶりの返り咲きかつラストイヤーのタイムマシーン3号など、他にも知名度のあるコンビや話題性のあるコンビはいましたが、
キングオブコントやバラエティでの活躍が認められたのか、あるいは予選での出来が抜群だったのか、
ジャルジャルの後藤さんがこの枠に選ばれることになりました。
事実この年のジャルジャルは大きな台風の目となり、“優勝まであと一歩”のところまで辿り着きましたが、
1本目とほぼ同じシステムの2本目を披露したことでお客さんの抱く期待を超えきれなかったこと、
トレンディエンジェルが堅実に笑いを取っていったことなどが重なり、優勝を逃す惜しい結果となりました。
2016年:ハライチ(澤部)
この年は、4大会連続出場となるハライチの澤部さんが“面白い”枠に選ばれることに。
他にも有力どころは、三大会連続出場で前年度準優勝の銀シャリや、二大会連続出場のスーパーマラドーナ、2010年に準優勝をして以来二度目の出場となるスリムクラブなど。
しかしそれらを抑える四大会連続出場という実績と、あるいはバラエティでの活躍などが考慮され、本命枠に選ばれたものと思われます。
ちなみにこの年のハライチは6位でした。
アキナと同じ得点だったため敗退のタイミングも同じで、坊主二人(澤部さんと山名さん)を入れ替えての敗退コメントは印象に残っている人も多いかと思います。
ちなみにその前にカミナリとスリムクラブの二組も同じ得点で坊主同士(まなぶくんと内間さん)を入れ替える敗退コメントをしており、
M-1 2016の一つの流れ(?)となりました。
というか坊主が4連続で敗退したんですねこの年。
2017年:和牛(川西)
3年連続の決勝進出、さらに前年度準優勝という大本命筆頭の和牛・川西さんがこの年の“面白い”枠。
他の有力どころとしては2年連続の決勝進出であるカミナリ、3回目の出場・ジャルジャル、ラストイヤーのとろサーモンといったところでしたが、
直近で最も大きな結果を出している和牛に白羽の矢が立った、ということだと思われます。
この年の和牛も優勝にこそ手が届きませんでしたが、
和牛の代名詞ともなった“伏線回収”を存分に発揮したネタで2年連続の準優勝という結果となりました。
また、この辺りから“上沼さん怒られ枠”がお茶の間に意識されるようになります。
2016年スリムクラブ、2017年マヂカルラブリー、2018年ギャロップ、2019年和牛など、
優勝やネタ以外のところで傷跡爪痕を残すある種の名物イベント(?)が誕生しました。
2018年:スーパーマラドーナ(武智)
2018年は、4年連続の決勝進出かつラストイヤーのスーパーマラドーナ・武智さんが“面白い”枠に選ばれました。
他の有力コンビとしては、同じく4年連続の決勝進出である和牛、4回目の決勝進出でラストイヤーとなるジャルジャル、2年連続の決勝進出となるかまいたち、ゆにばーすなど。
和牛とジャルジャルは既に“面白い枠”に選ばれた経験がある、ということでまだ選ばれていないコンビの中から最も実績がありラストイヤーでもあるスーパーマラドーナが選ばれたものと思われます。
この年は審査員の方の指摘が初期のM-1を彷彿とさせるほど鋭いものが多く、客席が異様な緊張感に包まれていました。
そのためお客さんの緊張がほぐれるのがかなり番組の後半になったこと、
またスーパーマラドーナが披露したネタがサイコ要素の強いものであったこともあり、全体の7位という結果となりました。
しかし田中さんの“テッテレー”ボケはこの大会を大きく盛り上げる一因となり、
武智さんの敗退時の熱いコメントは、胸を打たれた視聴者も多かったのでは。
ちなみに先程触れたようにこの年の空気は、余りにもお客さんが暖かった2017年の反動がきたのか、と思うほど緊張感に包まれたものであり、
終盤登場したトム・ブラウンのあいさつでは拍手すらまともに起こらなかったほど。
9組目の霜降り明星でやっと客席のボルテージが1段階上がったという印象を受けます。
おそらく客席のテンションが上がらなかった要因は審査員の方の威厳、
テレビ越しですらすごい緊張感だったので生のお客さんたちはひとたまりも無かったでしょうね。
2019年:かまいたち(山内)
3年連続の決勝進出、キングオブコント優勝、そしてラストイヤーのかまいたち・山内さんが“面白い”枠に。
他の有力候補としては、2年連続の決勝進出となる見取り図くらい、後は全組が決勝初進出というあまりにもフレッシュな顔ぶれ。
しかしこの年がM-1屈指の当たり年となります。
かまいたちは大本命として参戦、“敗者復活の和牛と優勝を争う展開になるのでは”という予想の声も上がっており、
大会ではその通りかまいたちが、出番順二組目としては史上最高得点となる660点を叩き出します。
その後和牛や見取り図、ぺこぱ等の猛追を受けますが、
唯一かまいたちを乗り超えたのがミルクボーイ。
惜しくも優勝に手が届かなかったかまいたちでしたが、
この年見せた貫禄の漫才をきっかけに翌年以降テレビの露出が激増。
確かな実力で大ブレイクをもぎとりました。
2020年:見取り図(盛山)
新型コロナで荒れた世界、M-1 2020の“面白い”枠は3年連続の決勝進出、見取り図の盛山さんです。
他の有力どころとしては、2年連続の決勝進出となるニューヨーク、オズワルド、3年ぶりの返り咲きとなるマヂカルラブリー、4年ぶりの返り咲きとなるアキナなど。
これらのコンビの中で最も直近で得点や順位が上だった見取り図が、“面白い枠”に選ばれたものと思われます。
敗者復活枠がトップバッターを引くことになったり、史上初のユニットコンビであるおいでやすこががファーストラウンドを一位で折り返すなど、
“怪獣大戦争”と言われるほど派手なネタと展開が繰り広げられた2020大会。
見取り図も1本目はかなり舞台を広く使い、動きを取り入れたネタを披露しており、そういう意味ではこの“荒れた”大会の空気にうまく乗っていったのではないかと思います。
惜しくも優勝には手が届きませんでしたが、ファイナルラウンドはM-1史上初の“3票:2票:2票”という分かれ方になるほどの大接戦。
終了後も漫才論争という余波が巻き起こった2020年、
人によって評価が大きく分かれる癖のある回となったと思います。
2021年:ゆにばーす(川瀬名人)
M-1グランプリ2021の“面白い”枠は、3回目の決勝進出、ゆにばーすの川瀬名人。
他の有力候補は、3大会連続決勝進出となるオズワルドとインディアンス、2年連続の決勝進出となる錦鯉。
出場回数が同じゆにばーす、オズワルド、インディアンスの中で、直近の実績自体はオズワルドやインディアンスの方が上と見られることが多いです。
…が、
“最下位を経験してからの3年越しの返り咲き”という、昨年優勝のマヂカルラブリーと重なるストーリーに大きな期待がかけられたのか、
あるいは予選での出来が優秀だったのか、
この中では最も古株のファイナリストであるというところが注目されたのか、
ゆにばーすが選ばれることとなりました。
この年のゆにばーすは優勝争いにこそ絡めませんでしたが、盛り上がりにくい序盤を牽引していく役割を担いました。
2022年:さや香(新山)
2017年以来、5年越しのリベンジを狙うさや香の新山さんが選ばれました。
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