ヤーレンズ「結婚」
手数のヤーレンズが輝くのは2018や2023のような、客席がおとなしい年だと思っていて、
去年や今年のような明るめの大会では他の爆発した組や内容の強い組と比べられてどうしても落ちる。
手数で勝つスタイルである以上、他のコンビをウケ量で上回らなければならない。
にも関わらず、今回そのウケ量が上位陣と比べて上回れていなかった。
ただ、明らかに調子が入っていなかった去年と比べると伸び伸びやっている感じはした。
コント漫才からしゃべくりにシフトして決勝まで上がってきたのも凄い。
ちなみにヤーレンズの得点は2023年度と同じ。
トップバッターで観客や審査員に語りかけるしゃべくりのスタイルは、
2023の令和ロマンを彷彿とさせた。
めぞん「彼氏のふり」
歴代の歌や恋愛を扱うネタの中ではかなり笑った。
ただ、この手のネタはどうしても「ネタの若さ」がネックとなる。
要は、対象年齢が狭い。
二十代以降、年を経るごとにこのタイプのネタには引っ掛からなくなっていく。
十代は「なんでだよ!審査員わかってないな」と思うかもしれないが、
二十代、三十代になっていった時に、
徐々に「あー……そういうことか」となっていくラインのネタだと思う。
逆に、例えばお年寄りだけが笑うネタがあったとして、それが評価されなかったら貴方は「妥当でしょ」と言うと思う。
対象年齢が狭いということは、点数が伸びない合理的な理由になる。
また、これは敗者復活戦の20世紀にも感じることではあるのだけど、
「ここが盛り上がるポイントですよ」で発生した笑いや拍手は、恐らく芸人審査員は評価しない傾向にある。
ホラー映画を想像してみるとわかりやすい。例えばホラー映画鑑賞中に大きな物音が発生し、私はビクッとなった。
鑑賞を終え、振り返っても「大きな物音でビクッとなった」くだりが最大のリアクションだった。
じゃあ、これが一番怖いシーンなのだろうか?
「いや、確かにびっくりしたし怖かったけど、でもそれは急な物音によって起きた物理的なリアクションであって、『めちゃくちゃ怖いから』ではないな」
「本当に怖いシーンは他にある」
漫才も同様。
客のリアクションは大事だが、客のリアクションが面白さの指標の全てではない。
笑い声や拍手は、面白さ以外に『タイミング』や『間の取り方』で起こる。
笑い声は面白さを測る客観的な指標になるが、
「笑ったからと言って面白いとは限らない」ということだ。
……という感じで、「純粋な面白さ」を他の組とガチンコで比較した時に弱く、
上述した通り対象年齢も狭い。
ただ、逆に言うとこれくらいしかマイナス要素がない気がする。
正直私は「途中から歌い始める系」のネタは好みではない(若すぎるから)のだけど、
それでも笑ってしまった。
しかも、ちゃんと面白いと思って笑った。
そんなコンビは中々無い。
ただ若いだけのコンビでは明らかに無い。
カナメストーン「ロケ」
面白かった。
ただ、思ったほどウケないのもわかる。
地下感、ライブ感が出ているネタ。
とはいえ、例のテーマソングを口ずさむくだりはもうちょっとウケても良い気はした。
時間は巻き戻り、敗者復活戦で
20世紀、カナメストーン、ミキ
の三組で戦ったが、私はかなりの確率でカナメストーンが勝ち上がると予想した。
20世紀は構成が綺麗だが、めぞんのようにネタが若く、「盛り上がりポイント」ネタだ。和牛がトップを走っていた時代に特に評価されていたタイプのネタだが、現在は少し評価されにくい傾向にある。特に芸人審査員から評価されているところを殆ど見たことがない。
ミキは圧巻だった。上手い、完成度が高い。
もしミキがラストイヤーで、カナメストーンが若ければ、ミキが上がっていたのではないか。
芸人審査員も、心情的に「ミキよりカナメストーンを勝たせてやりたいな」という部分もあったと思う。
しかし、そんな中でも2票をもぎ取っていった。
色々な理由で叩かれることが多かったミキだが、
ミキが決勝で活躍していた2017〜2018ごろから7年が経ち、
「若いミキ」も今では落ち着いた。
観客や芸人がミキに対して「かつては正直鼻につくこともあったけど、今見てみると凄いなこのコンビ」と思い始めている。
来年はストレートで決勝に残る可能性が一気に高まった今年の活躍だと思う。
ただ!
その二組を凌駕していたのがカナメストーン。
正直この三組の誰を選ぶか、視聴者目線だと本当に好みによると思う。
私はカナメストーンとミキが同じくらいだったが、
「20世紀が一番良かった」という人の意見を聞いても納得する。
しかしそれでも、「芸人審査員はカナメストーンを選ぶであろう」という確信はあった。
ラストイヤーだから、という理由とはまた違う。
カナメストーンは芸人審査員が好む「純度の高い面白さ」「雑味」が大量に含まれていたからだ。
スタミナパンがこれに近い。
綺麗なネタも素晴らしいと思う。
ただ、雑味・えぐみのあるネタは、よりストレートに「面白さ」に繋がりやすい。
完成度が高くても面白いかは別だが、
雑味・えぐみはそれだけで「面白がれる」ポイントになる。
改めて、カナメストーン敗者復活おめでとう。
エバース「ドライブデート」
面白い。
というか凄い完成度。
正直、エバースは設定自体は無理があるケースがしばしばだ。
「車になってくれ」「人形になってくれ」
荒唐無稽だし、突飛だし、ここで気持ちが離れかける人もいると思う。
ただ、そこから話術で巻き返すスキルが凄すぎる。
圧巻だった。
M-1史に残る話芸だと思う。
真空ジェシカ「ペーパードライバー」
私は真空ジェシカが大だいだいだいだいすきだ。
ただ、今年の真空ジェシカは、これまでと比べて明らかに弱かった気がする。
2024>2023>2021>2022>2025
M-1決勝における真空ジェシカのネタの好み度はこんな感じ。
去年の商店街のような一撃必殺級の大喜利の羅列や、アンジェラアキと比べると、「弱い」と感じてしまった。
エバースの後、というのもかなり割を食ったか。
とはいえ、他の出番順だとしても、ドンデコルテを抜くほどの完成度ではなかった気がする。
ヨネダ2000「ドリブル」
ヨネダ2000のお家芸である「リズムネタ」「歌ネタ」。
ネタで笑って、
ネタの最中に抜かれるともこさんの真顔で更に笑った。
でも審査コメントを聞くと低評価ではないらしい。
そんなことがあるのか。
たくろう「リングアナ」
面白い。
たくろうの良さはそのままで、ライト層にもディール層にも刺さるようなフォーマットになってて非常に良かった。
たくろうのキャラが一発で受け入れられたのがとにかく大きい。
「面白いキャラだ」「大喜利コメントが強い人だ」と認識されてからは、
空気を支配していたと思う。
ドンデコルテ「スマホ」
実は珍しいタイプのネタジャンルだと思う。
一発も外さない。
エバースのようなロジカルネタなんだけど、
あちらが空想寄りなのに対し、
こちらは極めて現実的。
キャラもめちゃくちゃ立ってる。
たくろうと共に、来年ブレイクする筆頭になったのでは。
豪快キャプテン「バッグ」
私は好きなんだよ。
何年も前から好きで、
「でも関東では特にウケにくいだろうなぁ」というのは去年の準決などからわかっていた。
今年も「決勝不安だなぁ」と思ってて、
「でももしかすると」と期待しながら見たが、
会場の空気を掴むには至らなかった。
ただ、点数が思ったよりかなり高い。
実質650点台。
これは審査員が客ウケだけを頼りに審査していない証明だと思う。
そうだよな、面白いよな。
もしお客さんがウケていたらもう10〜15点上乗せされて、最終決戦にも進めたのだろう。
ちなみに、今回のネタは凄い好きなネタなので、
「ああ、これ多分関東ウケしないだろうな」と思いつつも
「いやいや、これこそが豪快キャプテンだろ」と思って喜んで見た。
ママタルト「初詣」
後藤さんの指摘、めちゃくちゃ飲み込めた。
確かに、あの崩壊するくだり、長ければ長いほど面白い気がする。
いつかの敗者復活戦で披露した「おにぎりが転がり続けるくだり」も、その長さが面白かった。
もし1分くらい崩落し続けていれば、そのクレイジーすぎる展開のインパクトでむしろ優勝争いに絡めた可能性もあるかもしれない。



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