まず、ざっくりの感想から。
審査員九人!多!2015以来!
松本さんが居ない年は(2015にならって)九人体制で支える、という方針を打ち出したのかもしれない。
また、大御所が一気に抜けて中堅層が全体を占めた。
「もはや現在の中堅層がかつての大御所くらいの年齢になっているのだから大御所扱いでも良いのではないか」という声もあるが、
中堅か大御所かの区分は年齢に依存しないので、現状は中堅として話を進めていく。
大御所が卒業し中堅組が増えることで考えられる変化は主に二つ。
①緊張感の緩和
ここが何より大きい。
緊張感は薄れ、「楽しい大会」になるのでは。
それこそ2015のような雰囲気になる可能性が高い。
②低い点数がつきにくい
出場コンビと距離感が近い中堅どころの審査員は、点数も寄り添いたくなるのかもしれない。
中川家礼二さんは2015年から2023年まで九年間もの間審査員を務めているが、一番低い点数は2015のメイプルに付けた87点。
87点はその一度きりで、最低でも88点をつけている。
海原ともこさんは最低が89点、
博多大吉さんは最低が87点、
笑い飯哲夫さんは最低が87点。
山内さんはKOCの審査員を四年間務め、52本ものネタを見てきて一番低い点数は89点が一度きり。残りの51本のネタ全てに90点台を付けている。
一方、80点台前半をつける審査員もいる。
ナイツ塙さんは2020の最低が85点、2018の最低が82点、
ノンスタ石田さんは2015の最低が83点だった。
点数の幅が少ない審査員よりも、
点数の幅が大きい審査員に高評価を受ける方がダンゴ状態から抜け出しやすい。
したがって、塙さんや石田さんから高評価を受ける組が有利と言えるかもしれない。
ちなみに、大御所と呼ばれる審査員の、新M-1に限定した最低得点はこちら。
松本人志:80点
上沼恵美子:81点
オール巨人:84点
立川志らく:85点
渡辺正行:86点
春風亭小朝:89点
山田邦子:84点
大御所の力
特に松本人志、上沼恵美子、オール巨人、立川志らくの四人は
「後半盛り上がったから点数を上げた」や
「よく受けていたから〜」や
「構成が綺麗だったから〜」や
「最後にもう一展開あれば〜」などの賞レース全般に使えるような抽象的なコメントがほとんど無く、芯を食ったコメントが多かった。
つまりそれだけ個別性のある審査をして具体性のあるコメントを出していた、ということ。この四人に賛否の多くが集中していたのは、それだけハッキリと審査をしていたことの表れでもある。
また、大御所芸人の多くは自分の存在感を理解した上で意識的に緊張感を増やすような発言をするなど、
大会としての見どころを多く作っていた印象。
審査員が注目を集めることは大会の注目度を上げることになり、ひいては決勝進出組の注目に繋がる。
そして、大御所達はそれらの立ち回りを行うために、リスクを背負っていた。自分達の言動が大会の成立に大きく関わるという責任感も大きかったと思う。
彼らの立ち回りの積み重ねが大きな話題性を呼び、宣伝効果を生み、M-1は再び冬の恒例イベントとなった。
個人的に思うこと
新しい顔ぶれの審査員、色々と驚いたけど非常に楽しみ。
大御所の審査員が行なっていたような個別性のあるコメントと立ち回り、
新たな見どころの誕生を期待したい。
大会の主役はファイナリストである、ということは大前提として、
視聴者が「この人の審査を見たい!」と思うような、
芸人が「この人に審査されたい!」と思うような、
審査員が誕生するのを期待したい。
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